マングース

紅頰獴 / Small Indian mongoose / マングース (Herpestes auropunctatus)

基本情報

学名:Herpestes auropunctatus
和名:マングース、フイリマングース
中国語名:紅頰獴
英語名:Small Indian mongoose
原産地:南アジア北部

生態・特徴

沖縄では1910年にハブとネズミを防除するために外来種マングースが導入されました。マングースは迅速に拡散・繁殖し、沖縄北部にまで分布を広げた結果、ヤンバルクイナにとって大きな脅威となりました。100年経過しても、日本政府は毎年多数の予算を使ってマングースを除去し続けています(注1)。

ツアー中に撮影した観察記録写真と撮影日

沖縄では「マングース北上防止柵」以南の地域で、特に河川近くでマングースを観察することがあります。

マングース (Herpestes auropunctatus) Mar 26, 2026 沖縄中部の公園
2026/3/26 沖縄中部の公園
マングース (Herpestes auropunctatus) 路上死
路上死

マングースの導入の歴史

以下の記述は主に金子之史(2021)渡瀬庄三郎による沖縄島へのフイリマングース導入に関連する1910年前後刊行の外来種文献の史料的検討を参考にしています。

実際にマングースを導入したのは渡瀬庄三郎(Watase Shouzaburou、1862-1929)です。当時沖縄の経済活動はサトウキビの栽培が中心で、サトウキビが多くの野ネズミを引き寄せ、ハブがその野ネズミを狙ってサトウキビ畑に入り込みました。そのため多くの人が毒蛇に噛まれるという状況でした。渡瀬は、マングースを導入することで野ネズミとハブの数を同時に抑制できると考えました。

渡瀬がマングースを導入する以前には、別の学者中川久知(Nakagawa Hisatomo,1859-1921)が1898年にアメリカ農務省の年次報告書を翻訳し、ジャマイカ島でのマングースの導入が引き起こした生態系の大惨事を『動物学雑誌』に掲載しました。

渡瀬がこの報告書を読んだかどうか、またなぜ外来種の導入リスクを軽視したのかは、彼自身の著作や当時の報道などから推測するしかありませんが、彼はマングースの導入に対して楽観的な考え方を持っていたと文献は推測しています。そのため、1910年4月に沖縄島と渡名喜島に外来種マングースを計29匹導入しました(注2)。

マングース (Herpestes auropunctatus) 参考資料 金子之史(2021)整理図表
参考資料 金子之史(2021)整理図表

2016年に五箇公一氏が寄稿した記事によると、渡瀬庄三郎は当時東京大学の教授で、動物学と生物地理学の権威でした。なぜ外来種の導入を判断したのでしょうか。当時の日本は幕末であり、富国強兵を追求する時代でした。渡瀬博士は食用目的でアメリカザリガニやブルーフロッグを積極的に日本に導入しました。もしかすると、当時の学者たちは外来種のリスクを過小評価し、この種が日本に「有益」だと考えられると積極的に導入していたのかもしれません。

注1:環境省が外来種の除去に用いる入札経費の参考資料
https://www.gyoukaku.go.jp/review/fusyo/shisaku/sheet/121_kankyo_0907.xlsx
令和4年度(2022年度)における外来種の防除のための総予算は約5.4億円であり、そのうち約3.3億円がマングースの防除に用いられ、さらに約1.4億円が奄美大島および約1.3億円がやんばるでのマングース防除事業に提供されています。

その他の参考資料:
特定外来生物防除等推進事業毎年予算 2020年度
特定外来生物防除等推進事業毎年予算 2015~2019年度

注2:1910年4月27日に渡名喜島で4匹のマングースを放しましたが、目撃情報はなく、おそらく絶滅したと思われます。

マングースを防除するための対策

政府はマングースの北上を防ぐために、塩屋湾から福地ダム、さらに南の地域にそれぞれ3つのマングース北上防止柵を設け、その地域ではトラップも仕掛けられています。これらの柵は特にマングースに対して設計されています:

  • 高さがマングースが飛び越えるのを防ぐのに十分です
  • 水平な棒がなく、マングースが上に登るのが難しい
  • 上部は金属板で覆われており、マングースがその上を掴んで登ることができません
  • 地下にも柵が埋められており、マングースが土を掘っても通り抜けられません
マングース (Herpestes auropunctatus)
マングース (Herpestes auropunctatus) マングース北上防止柵
マングース北上防止柵

マングースバスターズ(Mongoose Busters)は沖縄県でハンターと猟犬で構成された組織で、林道を巡回し、もし猟犬がマングースの匂いや糞を発見した場合、獲物がいることを示すために伏せてハンターがトラップを設置します。実際にマングースを発見した場合、訓練を受けた小型の猟犬が直接追跡して捕獲することもあります。

マングース (Herpestes auropunctatus) Mongoose Busters のハンターと猟犬
Mongoose Busters のハンターと猟犬

マングースバスターズの努力により、2026年に公開されたデータ(注3)ではトラップで捕獲されたマングースの数も減少し、同時にヤンバルクイナなどの希少種の分布範囲も広がりました。名護の源河地区(マングース北上防止第3柵の南端)では2年連続でヤンバルクイナの活動が記録されています。ヤンバルクイナの数も推定約720匹(2005年)から約1700匹(2021年)に回復しています(注4)。

マングース (Herpestes auropunctatus) 北上防止柵以北の地域、捕獲されたマングースのトラップ数減少、画像左上H19 (2007年) 右上H22 (2010年) 左下H25 (2013年) 右下R06 (2024年)
北上防止柵以北の地域で捕獲されたマングースのトラップ数減少、画像左上H19 (2007年) 右上H22 (2010年) 左下H25 (2013年) 右下R06 (2024年)
マングース (Herpestes auropunctatus) ヤンバルクイナ分布範囲拡大、左から右へ:H19 (2007年) H25 (2013年) R06 (2024年)
ヤンバルクイナ分布範囲拡大、左から右へ:H19 (2007年) H25 (2013年) R06 (2024年)

注3:令和6(2024)年度沖縄島北部地域におけるマングース防除事業の実施結果 及び令和7(2025)年度の取り組みについて(環境省報道資料)

注4:名護市内におけるヤンバルクイナの初確認について(環境省報道資料)