Geothelphusa tenuimanus
和名:ヒメユリサワガニ
中国語名:細掌澤蟹
英語名:Himeyuri Freshwater Crab
原産地:沖縄島固有種
ヒメユリサワガニはやや小型で、甲幅は約3cm。特徴は歩脚の比率が非常に細長く、体色は通常やや紫紅色を帯びます。沖縄島の石灰岩地形に分布し、北部・中部・南部の個体群は分断されており、その生息域は限られています。日常的には石灰岩環境の樹木や洞窟など、乾燥しすぎない場所で見られますが、各地域での個体数は多くありません。
サワガニ類の生活史では卵を海中に放出せず、母ガニが幼ガニが初めて脱皮するまで世話をします。ヒメユリサワガニの卵は直径約4~5mmで数は約25個と少なく、日本産のサワガニ属(Geothelphusa)の中で最大の卵サイズかつ最少の卵数です。孵化した稚ガニも大きいです。多くのサワガニは稚ガニを水中に放ちますが、ヒメユリサワガニは稚ガニを陸上に直接放すため、陸上生活に高度に適応していることがわかります。
ヒメユリサワガニは東アジア地域でも陸化の度合いが最も高いサワガニの一つであり、進化の観点から非常に特異で貴重な例です。また、本種は化石記録も発見されており、学術的な研究価値を持ちます。
tenuiはラテン語で「細い」、manusは「手」を意味する、本種の学名のtenuimanusは歩脚が長い特徴から由来した命名です。和名は第二次世界大戦で犠牲となった地元の学生義勇軍「姫百合学徒隊」を連想させます。沖縄南部には弔いのための姫百合の塔がありますが、命名の由来については命名文献に記載がありません。
參考資料:
三宅貞祥・嶺井久勝(1965).沖縄産淡水性サワガニの一新種.九州大学農学部学芸雑誌,21(4):377–383.
Naruse, T., Karasawa, H., Shokita, S., Tanaka, T. & Moriguchi, M. (2003).
A first fossil record of the terrestrial crab, Geothelphusa tenuimanus (Miyake & Minei, 1965) (Decapoda, Brachyura, Potamidae) from Okinawa Island, Central Ryukyus, Japan. Crustaceana, 76(10), 1211–1218. https://doi.org/10.1163/156854003773123521


