Limnonectes namiyei
和名:ナミエガエル
中国語名:波江大頭蛙、波江蛙
英語名:Namie’s Frog
原産地:沖縄島北部(固有種)
ナミエガエルは渓流の上流域に生息し、夏に繁殖します。外見的には頭部が大きく見え、台湾に分布する Limnonectes fujianensis と同属です。虹彩には十字模様があり、瞳孔が菱形に見えるのが特徴です。

種名の「ナミエ」は、日本の動物学者・波江元吉(Namie Motoyoshi, 1854–1918)に由来しています。

波江元吉は1876年に東京博物館(現・国立科学博物館)に勤務を始め、1878年に設立された「東京生物学会」の発起人の一人でもあります。1877年から1886年にかけて各地で動物標本の採集を行い、1886年には東京帝国大学の教授・渡瀬庄三郎とともに沖縄を訪れました。(参考資料)
波江元吉は哺乳類の研究を主とし、当時の国頭郡組合立農学校(国頭農学校)の初代校長・黒岩恒(くろいわ ひさし)からケナガネズミの標本を受け取りました。当時はそれを中国・雲南省に生息するとされたMus bowersiiの沖縄産亜種と考え、1879年にMus bowersii var. okinavensisとして発表しました。これは現在のケナガネズミのシノニム(同物異名)です。
当時の論文は日本語で書かれていましたが、記載は詳細で有効な発表とされています。ただし、標本の所在が不明となっていたため、長年にわたり不明なままでしたが、2015年に国立科学博物館で保存されていた標本が発見され、当時の論文中の写真と一致したことにより、同一個体であると確認されました(参考資料)。
波江元吉は爬虫類などさまざまな分類群の研究も行っており、例えばクロイワトカゲモドキも彼によって命名されました。分類学上の修正を経て現在は「Gymnodactylus albofasciatus kuroiwae Namiye」は同物異名となっており、過去の文献にその名を確認することができます。
以下の図は、1912年(大正元年)に波江元吉が記した「沖縄県産守宮」についての論文で、黒岩恒から得た標本に基づく記載が含まれています。全文は参考資料をご参照ください。(参考資料)

また、波江元吉は台湾との関わりもあり、日本の台湾統治初期において、最初に台湾動物に関する論文を発表した学者の一人でもあります。1895年には『帝国新領地臺灣動物彙報』を動物学雑誌に発表しました (参考資料)。